ユーラシア大陸横断行     Back Next
           
       
               
  旅日記
9/18
ニヤ → 塔中
晴れ

 

吹きつける砂をかわしながら休憩する
今日はキャンプの予定だがこの天候ではおそらく無理だろう

ニヤを後に、サハラに次ぐ世界第2の規模の砂漠、タクラマカンを縦貫する「砂漠公路」に入って一路北へ。
全長600kmの道は油田開発のために14年前に建設されたもので、以前来た時は、勿論こんな道はなく、タクラマカンの只中に入っていくことなど考えられなかった。

走り始めると、すぐに左右から砂丘群が迫ってきた。360度、地平線まで続くエロチックな砂のうねり。しかし風が今日も強く、砂が舞って世界は濁っている。秋口に吹く砂嵐である。
タクラマカンとは、ウイグル語で「一度入ったら二度と出られない場所」を意味し、中国語では「死亡之海」と書く。

体調は上向きになってきた。この2日間は死に体だったが、もう大丈夫だろう。60歳にしてはまあまあの回復力と自分を鼓舞しながら砂嵐のなかを走り続ける。

路面に、パウダーのような砂が風に巻かれて渦を巻いている。しかし、砂が積もって道が埋没しているような所はない。
それは、道を左右から挟んで延々と続く防砂林のせいなのだが、これがまた、道の建設以上に手間も金もかかったらしい。見れば、2重3重に壁を作って砂から道を守る灌木達の足下に延々と延びる、黒い毛細血管のような注水ホース。地下水からポンプで水を汲み上げ、それを600kmにわたってくまなく潅漑する技術はイスラエルのものという。

毎日、定期的に水を流すことだけを仕事にする人達が暮らす「水井房」と呼ばれる小さな家が、およそ5km間隔で風に吹かれている。 この家だけでおよそ120軒、夫婦か親子2人で暮らす人達が250人いる計算になる。この道と付帯設備の建設のために使った金は、100元札を600kmの道に敷き詰めたよりかかったというのがもっぱらの噂という。
そこまでして、日本がすっぽり収まってしまうほど広大な砂漠に道を通したのは何故か?
物流のためか?
観光のためか?
・・・・否。
それは全て石油と天然ガスとレアメタルの発掘のためである。
砂の原野は、エネルギー資源の宝庫なのである。
耳を澄ませれば、茫々と吹く風の中から開発の槌音が聞こえてくる。それは、巨大な胃袋を持った怪物が全てを食い尽くし、呑み込んでいく音でもある。

その夜は、タクラマカンのド真ん中にある塔中(とうちゅう)という名の、西部開拓時代の集落のような町(?)の宿に泊まる。
砂嵐の中に、ガソリンスタンドと数件の商店と安宿が並んでいるだけの、なんとも荒んで淋しい場所である。
ここにいるのは、通過途中のトラックドライバーと油田で働く男達だけ。砂だらけの部屋の窓を開けて外を見れば、しかし意外にも化粧の濃いおねえさんたちも風の中を歩いている。荒くれ男達の相手をする、何処からか出稼ぎに来た売春婦たちである。こんな所で働く男達の楽しみと言えば、酒と博打と女だけと相場は決まっている。

一晩中、風吹き止まず。闇の中で、砂の海が唸っている。

 
 

走路地図はこちらへ

Photo&Caption
Yuji Miyazaki

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