ユーラシア大陸横断行     Back Next
           
       
               
  旅日記
10/12
スフバートル → ロシア入国 → キャフタ
晴れ

 

ロシア入国の日。そして、私の61回目の誕生日。

ロシア入国には驚くほど時間がかかると知らされていたから、午前8時に宿を出て国境に向かう。晴れているが、未明に霜が降りて平原は一面の銀世界。360度の広がりが朝日を浴び、ダイヤモンドを敷き詰めたように輝いて美しいが、しかし風は切るように冷たい。

モンゴル側の国境に着いたのが、8時半。しかし、列を作った車達は一向に動かない。後から分かることだが、その先のロシア側の国境が入る車を制限しているため、延々と糞詰まり状態が続いているのである。
で、バイクは先に通って良いと言うから先に進むと、手続きはいつもながら窓口のたらい回しだが、それでも30分ほどで出国手続きは終了。しかし、私は2台のサポートカーが一緒でないとロシアには入れない。で、待つことしばし。
その内、昨日のライダーカップルもやって来て、スイスイとロシアの方へ進んでいく。結局、サポートカーと共にモンゴルを出たのが午後2時過ぎ。それからまた延々と待たされて、ロシアに入ったのが午後6時半。国境に並んでから、10時間が経っていた。

どうしてロシア入国にこれほど時間がかかるかと言えば、税関の審査が厳しいから。役人がチンタラやっているわけではなく、訳の分からない手順もない。みんな、結構真面目に仕事しているのだが、やることが細かく、厳密だから時間がかかってしまうのである。
では、なにゆえにここまで厳しいかと言えば、モンゴル人の多くが小規模の密輸をやっているから。中国との国境でもそうだったが、エンジンルームに荷物を隠したり、ボデイの下に荷物を括り付けたりしている車が何台もいた。ここでは、オバサンやおじさん達が、自分の体に何やら商品をガムテープでぐるぐる巻きにしてロシアに入っていくのである。別に、ご禁制の品を運ぶというような悪質なものではないから、その程度のことはロシアの方も見て見ぬ振りをしているのだが、かといって何でもOKというわけにはいかないのだろう。だから、目をつけた車などは徹底的に調べる。で、時間がかかるというわけ。
私達が外国人の旅行者と分かってからは別の列に入れてくれ、手続きも迅速に進めてくれたのだが、気がつくのが遅いっちゅうの。なにせ、そこまですでに9時間以上が経っていたのである。

朝飯も昼飯も抜きでロシアに入った時はすでに暗く、たった3軒しかない宿探しに、これまた悪戦苦闘。 なにしろ字は読めず、言葉も「スパシーバ」と「ハラショー」と「ダスビダーニヤ」くらいしかできない。
地元のタクシードライバーに頼み込み、宿まで先導して貰って何とかベッドを見つけたのが午後8時。それから真っ暗な町を走って食堂を探し、電子レンジで温めたボルシチとハンバーグみたいな肉料理ありついたのである。この日一食目の粗末な夕食が、私の61歳の誕生日のディナーとなった。

トルガルト越えの日に次ぐ、長い一日だった。なんという誕生日とも思うが、忘れられない記念日になったと思えば腹も収まる。何事も考えようである。

しかし、夜は暗く、冷気は骨に染みてくる。
誕生日を祝ってくれた3人の仲間と共に明日から向かうのは、闇の彼方に広がる、未知のシベリアである。

10月12日、61歳の誕生日に撮影。
戸井。61歳の誕生日に撮影。
Photo:Jugatsu Toi

 

 
 

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Yuji Miyazaki

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