旅に出ます。
足かけ10年をかけて5つの大陸をバイクで駆け抜けようという、少しばかり手間暇のかかる旅です。
同世代の、やはり旅をライフワークとしている作家が、
「謎は世界の中にあるのではなく、自分自身の中にこそある」
といった意味のことを言っていますが、私はそうは思いません。
謎は、世界の中にこそあるのです。
世界こそ謎に満ち、だからこそ人は旅に惹かれる。
自分の中の謎など大したものではない。
一見、意味ありげなその手の話術は、結局、自らの肉体を陽と風に晒しながらのフィールドワークからリタイアするための言い逃れでしかない−−私はそう思います。
同世代の人間が次々に死にました。
息はしているけど、ほとんど死に体の同世代も山ほどいます。
だからというわけではありませんが、私は旅を続けます。
On the road again ーー 世紀を跨ぐ、長い旅の始まりです。
戸井十月