特にすることもなく、洗濯して日記を書く。
昼はザルソバをつくり、夜はカレー。

男3人、ザルソバ作りにいそしむ
目の具合も悪いことだし、今は休めと誰かが言っているのだと自分に言い聞かす。先を急ぐばかりが旅じゃないし。それに、急ごうったって先へ進めないんだし。居直って、この先、多分二度と訪れることのないだろう、この土地、この町のことをよく見ようと決める。
ホテルの裏庭の隣が長屋になっている。ここに、赤ん坊を抱きながら、いつも踊っている若い母親がいる。洗濯の時も炊事の時も、いつもともかく踊っている。この母親には他に10歳ぐらいの女の子と7歳くらいの男の子がいて、この二人が実によくお母さんの手伝いをする。
宿にも、住み込みで働いている母娘がいる。この娘が可愛い子で、飼っている小さな猿をしょっちゅう見せにくる。
タクシーの運転手、シュラスコ屋のお姐ちゃん、バーの女たち、ホテルの人々、そして裏の長屋の面々・・・。3日目で、何人も顔馴染みができてしまった。そして、国境の、少し荒んで忙し気なこの町が少しずつ好きになる。
もしかしたら、足止めを食らったこの町での何日間が、この旅で最も忘れられない日々になるかも知れない。それが、旅なのだ。