作家・戸井十月さん バイクの旅に出発
4ヵ月で大陸を一周

 オートバイによる5大陸の旅を目指している作家・戸井十月さん(56)が4日、その4大陸目にあたる南米1周に向けてリマを出発した。単行本の執筆やドキュメンタリー番組の制作も兼ねたプロジェクトで、旅の模様は随時、戸井さんのホームページ(http://www.office-ju.com/)でも報告される。
 戸井さんは東京出身の作家で、1978年に『旗とポスター』でデビュー。テレビ番組や映画にも出演する「マルチ文化人」として知られ、旅や人をテーマとした数々の著作の中には、チェ・ゲバラやカストロなどラテンアメリカに関する作品も少なくない。

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「5大陸制覇(走破)の一環」
 ゴール再びペルー予定

 オートバイによる南米旅行は、84年の南北アメリカ縦断と91年の南米一周に続いて3回目。個別の取材旅行を含めれば7、8回にはなるという。今回は97年から取り組んでいる「5大陸制覇(走破)」のプロジェクトの一環としての来訪である。
 「北米、オーストラリア、アフリカを走り、2年後をめどにユーラシア横断で終える計画。その間に、僕の一番好きな南米を走ろうと。動機というほどのものはないんですが、50歳を前にして『いつまでもこういう(オートバイによる長期の)旅はつらいかな』と思い、できるうちに一段落つけよう、と決めました」

 コースは太平洋岸を大陸南端まで下り、大西洋側を北上、ブラジルのアマゾン地方を抜け、仏領ギアナ、スリナム、ガイアナという戸井さん自身初めて訪れる非スペイン語圏の国々も回る。そして、ブラジル、ボリビアを経てゴールは再びペルー。8月20日頃の予定だという。
 「お世辞ではなく、ラテンアメリカは大好きなんです。自然のことで言えば、熱帯から山脈、氷河まで世界で1番バリエーションのある大陸じゃないですか。それにラテンの人も好き。アフリカを旅した時は、現地の人たちがホント、何を考えているのか分からなかったですからね。こっちの人は喜怒哀楽すべてがデフォルメ(誇張)されてるから分かりやすい。腹の立つこともありますけどね」

 リマには4月29日に入り、テレビカメラマンの四位雅文さん、伴走車ドライバー兼スチールカメラマンの宮崎雄司さんの2スタッフとともに、準備を進めてきた。
 「忙しくてリマの街を見る暇はなかったんですが、人間は基本的に変わりませんね。いい加減だし、絶対に謝らないしね(笑)」

 この旅の記録は年末頃には新潮社から出版され、また来年には「旅チャンネル」という有料テレビで6回にわたって放送されるという。

 「まず陸路で本当に行けるのかどうかすらはっきりしない仏領ギアナなど3カ国に行くのが楽しみ。それからボリビアでは、ゲバラの死んだ土地にも寄ろうと思っています。でもやっぱり、土地の人たちと触れ合うのが一番ですね。東京にいると(触れることのできる)世界は狭い。仕事として見れば、下手をすると赤字にだってなりかねませんが、結局は、自分がやりたいからやるんですよ」

(了)

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